文七元結

甘木盆俄-文七元結

あらすじ

 左官の長兵衛は腕の良い職人ですが、無類の酒好きとバクチ好きのため借金で首がまわりません。娘のお久は崩壊寸前の夫婦仲を助けようと、自ら置屋※1に身を売って50両のお金を拵(こしら)えます。娘の健気さを知った長兵衛は、心を入れ替えて仕事に励むのを誓いました。

 その帰り道に長兵衛は川へ身を投げようとする若者に出会います。大事なお店のお金の、50両を無くしたので死んでお詫びをすると云うのです。長兵衛は人の命を助けるため、娘の身売りした50両を、若者の文七に渡してその場を去ったのでした。

 翌朝長屋では、大家まで巻き込んだ夫婦喧嘩で大騒ぎです。そこへ置屋の藤助が、昨夜の文七と和泉屋清兵衛を案内してきます。事情を知り喜ぶところへ、娘のお久が駆け込んできます。驚く夫婦に清兵衛が、身請け※2は済ませたこと、文七とお久を夫婦にして店を持たせたいと告げます。さらには文七は髷(まげ)※3を結う元結(もっとい)※4を、工夫を凝らして売り出したいと申し出ます。

 置屋の女将も駆けつけ、一同わんやわんやの喜びの内に、40回記念公演にふさわしくめでたい幕切れとなります。

※1 置屋(おきや)
日本で芸者や遊女を抱えている家のこと

※2 身請け(みうけ)
芸娼妓などの身の代金(前借り金)を支払い、約束の年季があけるまえに、稼業をやめさせること

※3 髷(まげ)
髪を束ねたり結ったりして頭頂に髻(もとどり)をかたどった、日本の伝統的髪型

※4 元結(もっとい)
髷(まげ)の根を結い束ねる紐のこと

解 説

 文七元結(ぶんしち もっとい)は、三遊亭圓朝の創作で、落語のうち、人情噺のひとつです。
成り立ちは、幕末から明治初期にかけての江戸。薩摩・長州の田舎侍が我が物顔で江戸を闊歩していることが気に食わず、江戸っ子の心意気を誇張して魅せるために作ったとされます。

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